税務調査の実際
税務調査というと何らやましいことがなくても脱税の疑いをかけられてるようで怖いイメージがあるのですが、実際のところはどうなのかをお伺いしました。
お話を伺った方:黒木税理士事務所 黒木信行税理士
聞き手:株式会社ヒルストン 石坂裕
【黒木税理士の略歴】
大阪国税局で法人所得税の特別調査や企画部門で22年間従事した税務調査のプロフェッショナル。平成23年、黒木税理士事務所を開業。
—税務調査とは?
企業や個人事業者が適正な納税を行っているかを法律に基づいて調査するものです。一般の方には「税務調査=脱税調査」というイメージを持つ人がいますが、誤った申告をしていないかを調査するために行っています。
—税務調査が入るタイミングや入りやすい会社というのはあるのでしょうか?
4〜5年に一度定期的にあるものですが、中には20年間も税務調査が入らない企業もあります。タイミングで比較的多いのが、開業3年目の法人や個人です。入りやすいのは、まず黒字の会社。それから消費税の還付のある法人。楽天ショップの運営などインターネット取引(電子商取引)、そして国際取引の多い会社が最近は多くなっています。国外で稼いだお金がわかりにくい輸出入業や製造業などが当てはまり、規模が小さな法人でもあります。国外送金等調書の手続きをしっかりしておくことが重要です。
—税務調査でチェックするポイントとは?
仮勘定や役員借入金・貸付金などのイレギュラー科目に注目するのはもちろんだが、実は一番はKSKシステム(国税総合管理システム)などの調査や情報から得た取引をデータベース化し、そのデータベースを調査とマッチングしていくことを行っています。さらに、社長の経歴や会社の成長の段階などをイマジネーションして、会社の経営状況を想定します。オーナー制が強すぎると、この企業はこの段階でリベートが必要だとか…。自分が相手の立場だったらどんな不正を考えてしまうかな?と投影したり。結果、表面を取り繕うだけの対策ではだめな場合が多い。
—税務調査の正しい対策は?
正しく記帳する・書類を保存することが基本。根拠資料を揃えることが重要。特に、重加算税に相当する、売上の過少申告や仕入れの架空計上などが最も調査官の注目するポイント。退職金の規定など計算根拠の制度を作りそれに基づいた退職金の支払いをすること。
法律を正しく理解して、納得いかないことには安易に認めないこと。“おみやげ”は必要ないので、納得いかない場合は取引に応じない。調査官に言われたから応じるのではなく、法律的な根拠を求めることが大切です。
—ありがとうございました。
税務調査に強い税理士を選ぶポイントをまとめるとこの3点になります。
1.調査官の言いなりになりならない。
2.グレーな部分も含めて風呂敷を広げて金額を提示する調査官の戦略を理解し、対応する。
3.安易な取引に応じず、法律を理解して正しく主張する。